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新型コロナウィルスの航空産業に対する影響に対応するためのITFの要求

ニュース 07 Apr 2020

 新型コロナウィルスのパンデミック(世界的流行)が続く中、航空産業は生き残りをかけて闘っています。しかし、航空産業だけではこの闘いに勝つことはできません。今日、世界は航空産業と数百万人の乗客や航空労働者の将来を決定づける決断を下す必要があります。

 航空産業は世界で約1,020万人を直接雇用していると推計されています。また、航空産業の関連・支援サプライチェーンはすそ野が広く、航空支援サービス分野で働く人は世界に6,550万人いると言われています。

 しかし、現在、航空輸送能力は既に4割以上削減されています。現在の飛行制限が3か月続けば、例え2020年後半に景気が徐々に回復したとしても、航空業界が被る被害は2,520億米ドルに及び、収益は前年度を44%も下回る可能性があると予測されています。

 航空業界は新型コロナウィルス危機発生前から、過去数十年にわたり、以下のような問題に苦しめられてきました:

  • 格安航空の供給過剰
  • 規制緩和と企業統合
  • 労働の下請け化と分断化
  • 株主報酬や役員報酬が最優先される企業慣行
  • 労働者の賃金、労働条件、安全衛生状態の低下

 世界経済や社会が新型コロナウィルスのパンデミック(世界的流行)から回復する際に、航空産業は中心的な存在となるでしょう。真の意味で唯一のグローバルな交通運輸産業として、航空産業はあらゆる産業全体を動かし、世界貿易の多くの側面を担っています。航空需要が回復した際には、航空サプライチェーンで働く何百万人もの労働者は早急に職場に戻る必要が出てくるでしょう。したがって、将来の経済と社会を再建するために、今、航空産業で働く人々の雇用を維持し、保護し、さらに強化する必要があるのです。

 航空は長期計画を必要とする産業です。航空需要が実際に高まる何年も前から、パイロットやキャビンクルーなどの全ての航空労働者の訓練を行い、航空機を最新化し、インフラを整備する必要があります。今日行われている決定や約束は、現時点では余りにも野心的と思えるかもしれませんが、後世になってみれば、控えめではあるが実用的で必要な決断だったと思われることでしょう。

 したがって、この危機にあたり、航空産業への適切な投資を行い、業界への財政支援を行わないことは、世界が新型コロナウィルスの問題を克服した後に訪れる、気候変動との闘いをも危険にさらすことになるのです。新たに製造される航空機は二酸化炭素の排出を4割削減することが可能です。したがって、今、将来の航空産業と対気候変動対策に投資することが極めて重要なのです。

 企業や労働組合が緊密に協力することを基本に、各国政府がリーダーシップを発揮することが現在の課題に対する唯一の解決策です。

そこで、ITFは各国の政府に対し、労働組合と以下について協議することを求めます:

1.航空産業が、力強い政府、規制、監督、計画策定、投資、(適切な場合は)公的所有などを保障する公益産業であることを認識する。

2. 「移動の禁止」は最後の手段とし、交通運輸の最低限の流れを確立し、その実施を担保する。また、航空貨物輸送については、いかなる移動制限においても例外とする。

3.国内で政労使の代表者から成る航空関係の協議会を設置し、戦略を策定し、投資活動と経済支援を調整し、労働供給について計画を立て、全ての航空輸送について監督する。

4. 傷病休暇、収入維持、社会保障の適用を、正規労働者、非正規労働者、不安定雇用労働者など、雇用形態に関わらず、全ての労働者に直ちに拡大する。

5. 空港のサービスや雇用の下請けとアウトソーシングを削減し、適切な場合、現在、グランドハンドリング、セキュリティ、清掃などを含むすべての空港サービスに従事する、外注先で働く労働者や派遣労働者などのあらゆる航空労働者を直接管理または雇用するよう、空港当局に指示する。

6. 公共資産の財政的な持続可能性強化のため、公的に所有されている度合いの高い空港を航空会社が優先的に利用するように指示する。

7. 航空会社や空港当局、航空サプライチェーン企業に債務免除、租税公課の支払い猶予、株式の公的所有などの財政支援を条件付きで提供する。

8.既に設置されていない場合、航空業界の回復後に企業の株式を再び民間が買い戻すことを含め、企業にそうした財政支援策を提供する際の、以下のような条件に合意する:

  • あらゆる航空労働者の賃金、条件、福利を保護する。
  • 株式買戻し、株主報酬、過剰な役員報酬を禁止する。
  • 企業の取締役会への労働代表の参加などを通じ、所有とガバナンスを民主化する。
  • 全ての労働者を対象に、結社の自由と団体交渉の確保、強制労働と差別の撤廃、職業安全衛生確保に関する国際労働機関(ILO)の諸条約を尊重する。

9.当該企業が債務削減、航空機の近代化、従業員訓練と教育やその他の財政強化策への再投資を確実に行えるよう、利益レベルに上限を設ける。

10. 危機が継続する期間は、企業による株主報酬や過剰な役員報酬の支払い、株式の買戻しを禁じる。

ITFは航空関係企業に対し、労働組合を承認し、労働組合と以下について協議することを求めます:

1. 労働者の健康、安全、福利を脅かす要素を把握し、それに対する職場の対応策を策定・実施する。

2. 全ての労働者や、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、何らかの形で医療サービスを提供している全労働者を対象に、無料の検査、治療、訓練、備品と設備を提供する。

3. 新型コロナウィルス感染の脅威を抱える労働者、あるいは感染したあらゆる労働者を対象に、傷病休暇や休暇の形で休暇の第一日目から有給休暇を保障し、団体交渉による労使の合意に基づく様々な方策を通じ、全ての労働者の賃金を保護し、満額を支払う。

4. 自社のビジネスおよび自社のサプライチェーンに従事するあらゆる労働者に対して会社が注意義務を負っていることを認識し、義務を遂行する。労働者は可能な限り、直接雇用の正規労働者とし、直接雇用が不可能な場合にのみ、業務を下請け会社に託すことを約束する。

5. 労働者や乗客の安全衛生と福利を守るため、自社のビジネスやサプライチェーンにおける不安定雇用や非典型労働の利用を終了する。

6. 労働者の雇用と安全衛生を守るため、シフトや勤務日、労働時間面の改善を行う。

7. 新型コロナウィルス感染拡大が収束した際にも持続可能な株主報酬、配当金、役員報酬を決定する。

8. ある地域または国のウィルス封じ込め政策の結果、財政的または物理的に現時点でそれが可能でない場合、最終的には全ての労働者が通常の勤務地に戻れるように担保する。

9. 新型コロナウィルス感染の脅威への対応の一環として、医学的検査を受けた労働者のプライバシーと個人情報を保護し、企業の意思決定に利用される労働者に関するいかなるデータについても、労働組合と共有する。

10. 全ての労働者を対象に、結社の自由と団体交渉の確保、強制労働と差別の撤廃、職業安全衛生確保に関する国際労働機関(ILO)の諸条約を尊重する。

 

各国政府と企業はこの危機に対する国際的な対応を調整し、グローバル経済の回復期に向けて航空業界の準備を進めるための適切な議論の場としての国際民間航空機関(ICAO)の場を通じて、ITFやその加盟組合とも協力するべきです。

 

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