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悪評高いアスワン社、 オーストラリアでの2隻の拘束で、フリートの半分が拘束される。

ニュース 記者発表資料 02 May 2021

オーストラリアの海事当局が物議を醸しているカタールの海運会社、アスワン・トレーディング&コントラクティング社が所有する2隻の船舶を深刻な労働者の権利侵害を理由に拘束した。数週間前に同社の別の船舶の乗組員がクウェート沖でハンガーストライキを余儀なくされたばかりだ。

今回の拘束により、現在、アスワン社が所有する6隻の船隊の半分が運航停止になった。同社は2017年に海運規制当局によってブラックリストに登録され、同社の会長はカタール警察から今も指名手配を受けている。

 

ポート・ケンブラでアスワン社に電気も燃料もないまま遺棄されたマーヤム号の船員たち

MV マーヤム号(IMO番号:9272864)は2月19日にオーストラリア、ニューサウスウェールズ州のポート・ケンブラでまずオーストラリアの海運局(AMSA)から、安全と乗組員の福利面の36項目の問題を理由にまず拘束された。国際運輸労連(ITF)のインスペクターが3月5日の朝に石炭運搬船のMV マーヤム号の査察を行った際、同船をオーストラリアの海域から出向させるべきではないさらに多くの問題点を発見した。

ITFインスペクターが船長や乗組員と話した結果、船主のアスワン社が最近、頻繁に主要サプライヤーへの契約費の不払いを起こしており、エンジンを動かすための燃料や電気、食糧が提供されないままになっていることが判明した。この状態が 3〜4日続く間に、冷蔵庫の電源が切れ、食糧を廃棄せざるを得なくなった。電気もエアコンも、携帯電話や通信機器を充電するための電力もなく、燃料と電気が切れたことで、乗組員の心身の健康が深刻な危機にさらされた。 23人の乗組員たちはシャワーも使えず、トイレを流すこともできないため、海からバケツで水を汲みあげて使うしかなかった。

オーストラリア海運局(AMSA)が2004年に建造された同船の主発電機に複数の問題を発見していたため、乗組員は既に船の非常用発電機を使用するしかなくなっていた。それ自体は問題ではなかった。船に電力を供給するため、陸上の発電機を探し、それを甲板上に載せて船に電力を供給していた。

しかし、最悪なことに、ITFインスペクターはマーヤム号がその夜9時には再び電力切れになることを知った。緊急の支援が必要だった。

そこで、ITFはAMSAとニューサウスウェールズ州のポート・ケンブラの運営責任者に連絡を取り、マーヤム号の乗組員が直面している危険な状況を伝えた。 ITFの圧力で、空の燃料タンクが午後2時に到着し、ITFがさらに何回か電話をかけてプレッシャーをかけたため、午後7時30分に港湾局が満タンの燃料タンクをマーヤム号に届けるに至った。 2番目の満タンのタンクが同船に到着した時、当局が自分たちを助けてくれることはないと意気消沈した乗組員が発電機をシャットダウンする寸前だった。さらに、追加の燃料タンクが3月6日の午前4時にも到着した。

燃料危機が緩和される一方、マーヤム号には他にも問題が山積で、ITFは引き続き対応を余儀なくされ、乗組員の心配は続いた。

3月6日、ITFの要請により、ニューサウスウェールズ州ポート・ケンブラの港湾局が1,000リットルのボトル入り飲料水を含む3,000豪ドル相当の食糧を船に届けた。これにより、乗組員は少なくとも数日間は食事を取ることができ、数週間にわたる栄養失調状態から脱することができた。しかし、信じ難いことに、乗組員はオーストラリアの港でこの地獄の日々を送らざるを得なくなる前から賃金をきちんと受け取っていなかった。中にはILOの最低賃金をはるかに下回る賃金しか受け取っていない船員もいた。さらに、23人の乗組員全員が受け取るべきボーナスを受け取っていなかった。 ITFの試算では、未払いのボーナスとILO最賃以下の未払い賃金の合計額は27,978.50米ドルに及んだ。

通常、港でミッション・トゥー・シーファーラーのような団体か、あるいは、上陸許可が下りた場合は自分で店に足を運んで、個人的に必要な物を購入するための少額の現金を船内で受け取っている船員が多い。マーヤム号の乗組員たちは、船がポート・ケンブラで拘束される前の14日間を海上で過ごし、現在、実施されているコロナ禍での手続きに従い、上陸を許可された。ITFが圧力をかけた結果、3月17日に5,000米ドルの現金が船長に手渡され、船長がそれを乗組員たちに分けた。その結果、乗組員たちは個人的に必要な物を購入することができた。

ITFの調査により、23人の乗組員のうち9名の雇用契約書が3月11日に期限切れしていることが判明した。6か月乗船している船員もいれば、乗船期間が3か月という船員もいた。

しかし、雇用契約が期限切れした状態で船員を船上で働かせることは、海上労働条約(MLC)に違反している。

マーヤム号がポート・ケンブラ港から出て、ブラックリストに載っている船主が再び利益を獲得することを許可される前に、AMSAはアスワン社が是正しなくてはならない一連の「欠陥」をリストアップした。是正を要する問題には、まずもって、契約期間を過ぎていて、トルコ、インド、グルジアへそれぞれ帰国することを願っている9名の船員の本国送還が含まれるべきだ。 MLCのもとでは、船員の本国送還のための航空券代その他の費用は使用者が負担することになっている。コロナ禍の今、この費用には隔離期間やPCR検査に関わる費用が含まれる。

先週後半、アスワン社が発電機を修理する部品の調達を手配したとITFは認識している。船級協会の鑑定人が水曜にマーヤム号を査察したが、その査察費を船級協会が肩代わりしているそうだ。

 

遠く離れたクィーンズランド州でアスワン社の別の船が拘留される。

マーヤム号はアスワン社が所有する船舶のうち、先月拘束された2隻目の船だった。パナマ籍のばら積み船、MVムーバーズ 3号 (IMO番号: 9250244)がウェイパで3週間前に拘束されていた。

ウェイパはクィーンズランド州ケープヨーク岬にある最大の町で、リオティント社が利用するオーストラリア最大のボーキサイト輸出港だ。州都のブリスベンからは約2,800キロ離れている。

オーストラリア当局が確認した報告によると、ムーバーズ3 号は拘束された後、一旦解放されたが、この数週間のうちにまた拘束された。同船のエンジンが深刻な問題を抱えていたため、当局は同船をウェイパの内港に入れることを阻止し、同船はウェイパの外港に錨泊された。

ムーバーズ3 号のエンジンは壊れてプロペラが回転しなかったが、そうなると飲み水やシャワー、トイレの水洗や洗い物ができない。ムーバーズ3 号のような船舶は、通常、強力なエンジンの力で海水から真水を作り出している。船内の飲み水が今週で切れそうになり、地元当局は第三者に船内に水を供給させようとしていた。

エンジンのトラブルは欠陥の修理がきちんと行われていないことの証拠であり、もっと深刻な問題がある可能性もあるとムーバーズ3 号の問題に対応した地元のITFインスペクターは語る。船級協会の鑑定人が月曜に乗船し、問題を調査した。

乗組員の幸福に影響を与える深刻な問題として、船の冷凍庫が壊れていることがあり、乗組員は肉などの食料品を廃棄せざるを得なかった。冷蔵庫の問題はこの数日でようやく解決されたが、トルコに帰国したいと訴えていた船の司厨長にとっては大きなプレッシャーだった。司厨長は昨日、下船させられ、帰国できることになったが、帰国が許可される前に、ケアンズにある政府の隔離施設で14日間を過ごさなくてはならなかった。

残りの乗組員は、トルコとヨルダン出身だったが、大体3か月から6か月、ムーバーズ3 号に乗り組んでいた。しかし、彼らもアスワン社がクウェートで拘束されているウラ号の乗組員を無視し続け、ポート・ケンブラでは燃料費を支払えていないことから、約束のボーナスを支払ってくれないのではないかと懸念していた。 ITFは今もムーバーズ3 号に乗り組む船員に対するアスワン社の労働権侵害の証拠を集めている最中だ。

乗組員にとって喫緊の懸念は、飲み水と食糧がないことだ。報告によれば、リオティント社が約3,000オーストラリアドル相当の緊急食糧を小型トラック2台に積んで提供した。大手鉱物企業のリオティントが食糧を提供していることからして、アスワンが深刻なキャッシュフロー問題を抱えているのではないかとITFインスペクターは疑った。

リオティントはウェイパ近くでボーキサイト鉱山を運営しており、ウェイパ港最大の利用者だ。元々はコマルコという会社が、アルミニウム製造に使われる主な鉱石のボーキサイトに対する地元先住民の所有権を取り消すよう政府に働きかけて成功し、1960年代に鉱山の町を建設した。コマルコ社は後にリオティント・アルミニウムになった。

2002年に建造されたムーバーズ3号は、中国の上海近くの六横港からウェイパまで運航してきた。このアスワン社の船舶が、今現在進行中の貿易戦争に巻き込まれているのかは定かではない。現在、オーストラリアの貨物を積んだ十数隻の船が中国当局によって荷降ろしを阻止されている。

ブラックリストに載せられたアスワン社に抗議のハンスト、クウェートで起きる。

アスワン・トレーディング&コントラクティング社の名前はITFとITFインスペクターの間では有名だ。

同社の名は、今年1月にMVウラ号に乗り組む19名の船員がクウェートのシュアイバ港でハンガーストライキを実施した際、ニュースで報じられた。会社から遺棄された当時、乗組員たちは既に14か月乗船を続けていたが、今、この期間が17か月に達した。アスワン社はMVウラ号の船員に未払い賃金を総額410,000米ドル支払う必要があり、さらに本国送還費も支払わなくてはらない。

ITFは 同船の乗組員の法廷闘争を支援しており、弁護士も手配した。クウェート当局に介入するよう懸命に説得をかけたとITFアラブ地域・イランネットワークのコーディネーターを務めるモハメド・アラチェディは述べる。

「しかし、結局のところ、アスワン社が責任を放棄しているため、MVウラ号の乗組員は依然として賃金を貰えないまま、船内に留められ、遺棄されたままだ」

「同社はウラ号の乗組員を不当に処遇しても、捕まるどころか、マーヤム号やムーバー3号のケースにも見られるように、他の船でも乗組員の不当処遇を続けてきた。アスワン社が船員に対する義務をしっかりと果たすまで、オーストラリア当局はこれらの船舶を放免しないように注意するべきだと私は思う」とアラチェディは語る。

 

ITF、AMSAがアスワン社の船舶の出港を拒否するよう要請

これ以上多くの国で法律違反を起こさないよう、オーストラリア当局はカタールの海運会社、アスワン社にもっとプレッシャーをかけるべきだとITFは語る。

「この会社は悪名高い規則破り、MLC 違反の常習犯だ。同社の船舶のうち2隻は現在、オーストラリアで海運局に、もう一隻はクウェートで拘束されており、乗組員はいずれも乗船させられたままだ」とオーストラリアでITFコーディネーターを務めるイアン・ブレイは語る。

ITF はアスワン社に未払い賃金やボーナスを支払わせ、雇用期間を過ぎて働かされている船員を本国送還させようとしているとブレイは述べる。

「AMSAにオーストラリアの法律と、オーストラリアが批准している海上労働条約の強制実施をさせなくてはならない。アスワンのような企業には、法律違反や船員の権利を侵害した結果、何が起きるのかを思い知らせる必要がある」

「アスワン社は今も世界中で船員の権利を侵害し続け、様々な国の海運局のブラックリストに載っている。また、経営陣の一人はカタール警察から追われている。同社の船の出港を禁じる理由はもうそれだけで十分なはずだ」とブレイは語った。

 

おわり

 

注:

  • イアン・ブレイはインタビュー対応可能

 

連絡先:          media@itf.org.uk        +44 20 7940

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