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バチカン、ITF、使用者がグローバル正義のために団結

19 Jun 2019

バチカンサミット声明文(2019年3月4~5日、於カシーピオ4世会館)

 2019345日、国際運輸労連(ITF)とポンティフィカル科学アカデミー(PAS)の学長の共催により、世界各国から交通運輸労組、製造業者、技術者の代表者が集まり、第一回サミットがバチカン市国のカシーピオ4世会館で開催された。  ITFとその加盟組合の他、デロイト、トランスデブ、MSCシッピング、ヌーヴォー・トランスポート・ヴィアギアトリ、ボルボ、ゼネラル・モーターズ、セキュア・アメリカズ・フューチャー・エナジー、ダイムラー・ファイナンシャル・アンド・モビリティ・サービスなどの企業も参加した。

 サミットは、社会的、経済的、環境的公正を促進することなど、現代社会が直面する最大の課題を話し合い、こうした課題に一丸となって対応するための活動計画を策定することを決定し、終了した。以下の声明文はこのサミットの議論を総括したものである:

はじめに

 第一回サミットの目的は、交通運輸業界に責任あるグループを結成し、交通運輸や社会全般が直面する様々な課題、例えば、現代の奴隷制、人身売買、労働者の搾取、自動化、気候変動に関して世界の意識を高めることである。フランシスコ教皇の2回目の回勅「ラウダート・シ」は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」ととともに、労働組合、企業、政府が協力し、様々な課題やそうした課題がもたらす機会にに対応する枠組みを提供している。カトリック教会とともに、人権や労働権を保護・促進し、こうした問題について正義を確立する手段として、国際、国内、地域レベルで政労使の対話を継続することを我々は約束する。  

 結社の自由、団結権、団体交渉権、団体行動権は基本的人権である。環境、経済、社会の統合的な発展の新しいモデルの建設や、新しい働き方を促進する上で、 労働組合関係組織は常に大きな役割を果たしてきた。そうした労働組合関係組織の取り組みは、当該の業界や社会的パートナーと協力して行われなくてはならない。

持続可能な開発のための2030アジェンダ

 持続可能な開発のための2030アジェンダにより、国連加盟193か国のグローバル開発上の優先課題が設定された。2030アジェンダでは、17 の持続可能な開発目標 (SDGs17ゴール)が設定され、全ての国連加盟国がこのために努力することを約束した。SDGs17のゴールは以下から成る:貧困の撲滅 (SDG 1)、国民皆保険(SDG 3)、全ての子供への質の高い教育の提供、生涯学習提供(SDG 4) ジェンダー平等 (SDG 5)、万人のためのディーセントワーク(SDG 8)、国内と国家間の不平等の是正 (SDG 10)、人的要因による気候変動の終結 (SDG 13)、効果的公共機関の設置と法の支配 (SDG 16)とその他のゴール。

 これらのゴールとそれに関連する目標により、行動を起こすためのグローバルな枠組みが万人に提供されている。従って、我々は国内、地域、国際レベルでSDGゴールを達成するためにできることを全てやるべきだ。真摯な対話と協力を通じて多国間制度を強化することが、政府と国民が結ぶ社会的契約を更新し、公正かつ持続可能なソリューションを構築していくことを支援するだろう。知識人やビジネス界のリーダー、使用者、市民社会団体、国際組織、そして特に各国の政府が共同で責任を負い、現在はもとより将来にわたり、社会的経済的正義を実現していかなくてはならない。

気候正義

 気候変動、淡水の減少、生物多様性の消失、社会のつながりの全体的な低下は相互に密接に関連している。近年のこの世代は、かつての世代とは比べ物にならないほど「私たちの共通の家である」地球を痛めつけ、酷使している。人間の活動に起因する気候変動は地球規模の危機であり、環境面、社会面、経済面、政治面に深遠な影響を及ぼす。

 我々が今、決意をもって行動すれば、最も危険な気候変動を阻止する可能性は依然として残されている。そして、気温の上昇を1.5度に抑えるというパリ協定で設定された目標を達成することは可能だ。二酸化炭素の排出がゼロの電気を動力として走る公共交通を拡大することは、温室効果ガスを減少させ、気候変動に対処するための闘いの不可欠な要素である。大胆かつ各国や特定の都市の状況に対応する政策が必要だ。都市部でのゼロ排出の達成は、手ごろな価格で量的に豊富、かつ安全で信頼できる公共交通を今すぐ、世界中に野心的に拡大することと、軽自動車とトラックの両方での二酸化炭素ゼロ排出車への急速な移行によってのみ可能となる。

 将来の公共交通システムの構築により、インフラと交通の価値のチェーン全体で質の高い何百万人もの雇用を生み出すことが可能だ。これにより、これまで忘れ去られていた人々が働くことができるようになり、スキルに基づく雇用がより確実に提供されるようになり得る。公共交通調達においては、ディーセントワーク水準と女性や青年、忘れられてきた地域住民の訓練と見習い制度を両立できる可能性を秘めている。

 世界の殆どの都市において、提供できる仕事がある場所と、貧困層や労働者階級が居住している場所のミスマッチが深まっている。手ごろな価格で、量的に豊富かつ安全で信頼できる公共交通は極めて重要であり、効果的に貧困を削減できる手段であり、貧困層や労働者階級がより良質な賃金労働を得られるようになる。

 一方、既存の交通運輸産業で働く労働者のために公正な移行を模索するべきであり、将来の交通運輸労働者が人間らしい賃金と労働条件、安定した雇用を確実に得られるよう努力していく。交通運輸関係の温室効果ガスの排出が削減されることになれば、新たな雇用が多く生まれるだろう。フォーマル、インフォーマルの形態を問わず、交通運輸労働者はこうした公共交通システムの拡大の計画や実施にフルに参画しなくてはならない。タクシーやミニバスを運転する労働者は、将来の新しい公共交通サービスで働くのに必要なスキルと経験を既に今現在、有している。

新しいテクノロジーと仕事の未来

 自動化やデジタル化、自動運転などのテクノロジーは、職場で労働者を置き換えたり、労働を強化したり、業務プロセスを再編成したりするのに利用されている。テクノロジーの進化と利用は社会的なコストと恩恵を伴う。職場では自動化やデジタル化、自動運転などのテクノロジーは、業務プロセスを再編成することに利用され得る。こうした新技術は効率面や環境、安全面で多くの恩恵をもたらすことができる。交通運輸サービスや交通運輸産業の仕事を向上させることもできる。一部の技術により定例業務が排除されることで、仕事をよりクリエイティブかつやりがいのあるものにする可能性を秘めている。こうしたテクノロジーはまた、交通運輸が環境に及ぼす影響を低減することもできる。

 しかし、今日の経済界は、利益を優先させ、人類に及ぼし得る悪影響を気にすることなく、テクノロジーであれば何であれその進展を許容している。労働者や消費者はデジタル化がもたらし得る極めて大きなマイナスの社会的コストを許容してはならない。これらの新技術へ移行したり、導入したりする場合、人的要素についても考慮されるべきだ。すなわち、社会的コスト、税金収受の対象母体の減少、仕事の破壊、公共の安全や保安が脅威に晒されることなどを考えるべきだ。唯一これを達成する方法は、労働者や社会に破壊的影響を及ぼし得る新技術を大規模に導入する可能性がある場合、労働組合や政治家、社会的パートナーと協議した上で、導入されるよう担保することだ。

 私たちの職場と社会を形づくっていく上で、テクノロジーが重要な役割を担っていくことは疑いがない。一般市民、特に労働者がテクノロジーの発展に参加し、その恩恵を受けるべきだ。さもなければ、テクノロジーはしばしば、一握りの人間だけに恩恵をもたらし、社会の大多数の人々に痛みと混乱をもたらす。テクノロジーを政治的力の問題と切り離すことはできない。誰であれ政治的に力を持つ者がテクノロジーをどう使うか、その中で誰が勝者となり、敗者になるのかを決めるからだ。データの所有者もまた力をもつことになる。今日のテクノロジーの変化の主な部分がデータを生み出し、それを分析する能力の部分で起きているからだ。ビッグデータは交通システムの効率化には役立ち得るが、プライバシーが消滅し、データを管理する者が不当に大きな市場掌握力や政治力をもつことにつながり得る。

 これらの技術が労働条件を悪化させ、労働者の管理能力をそぐ可能性がある場合は特に、デジタル・テクノロジーを民主的に監督することが持続可能な開発のために重要になる。労使間の力のバランスにより、こうした問題がどちら側の利益になる形で決着するかが決まるだろう。政労使が協力し、新技術の導入が人的要素を中心に据えた形で導入されるように担保しなくてはならない。

 全労働者が自動化や新技術の導入の影響を受けることになるが、特に職場では他の年齢層に比べ、青年が不均衡に大きな悪影響を受けるだろう。今日、実験段階にあるテクノロジーは、10-15年以内に汎用化される可能性が高いため、その影響が出てくる時には、今日の青年は中堅社員になっているだろう。政治家と労働組合が協力し、労働者がスキル取得の準備を適切に受けられるようにし、仕事の性質が変わることから負の影響を受けるだろう全ての労働者が確実に適正な移行を果たせるようにするべきだ。例えば、 生涯学習や労働者の再スキル取得を確保する方策を考えたり、労働者の権利を守ったり、社会保障を維持することなどが必要になる。

現代の奴隷制の撲滅

 経済成長の恩恵を共有できず、規制緩和を拡大し、労働権や労働組合権を含む人権が侵害されていることが、現在、世界にかつてないレベルで貧富の差が広がる状況を招いてきた。世界の僅か26人の人間が375千万人の最貧困層の富の合計と同じだけの富を占有しているのだ。雇用保障も社会保障もなく、退職金もでず、医療保険にも加入できない不安定雇用に就かざる得ない労働者が余りにも多い。世界のあらゆる地域で、交通運輸、特に都市旅客輸送は大部分がインフォーマルセクターに属している。2018年には、世界の全労働力の62% がインフォーマルセクターで働いているとの推計が出た。我々は、公正と生産性の高いフォーマルセクターの雇用への移行のために努力しなくてはならない。今日、不当に多数の女性がこの影響を被っている。世界的に見れば、青年の4人に3人がインフォーマルセクターで働いている。

 近代でも、フォーマルセクター、インフォーマルセクターを問わず、奴隷労働は世界中のあらゆる産業のあらゆる部門で起きている。国際労働機関(ILO)が発行する2017年版の「世界現代奴隷推計」によると、現代でも世界で4万人が奴隷状態に置かれており、うち25千人は強制労働をさせられている。この25千人の男女や子供たちは、借金により束縛されているか、奴隷のような状況で働かされている。

 2017年にITFインスペクターが回収した船員の未払い賃金は3,800万米ドルだった。こうした数値はそれ自体が驚くべきものだが、毎年必ず発生している。海事産業の無責任な雇用主が団体協約や労働者の権利を尊重しない場合は、ITFインスペクターが遺棄された船員の本国送還や食糧や日常物資の提供なども支援している。しかし、この問題は海運産業に限ったことではない。例えば、201812月、労働組合がデンマークで働くフィリピン人運転手の搾取状況を暴露し、これが新聞記事になった。EU法の抜け穴を利用して、無責任な使用者が運転手をマニラから欧州に連れてきて、驚くべき低賃金(月額1,060ドル)で働かせている。このような労働者の搾取問題に対応しなくてはならない。

 規制緩和、民営化、下請け化、労働組合権の侵害などにより、労働者を搾取しやすい環境が生まれてしまった。グローバル・サプライチェーンのトップに君臨する多国籍企業に直接雇用される労働者と、グローバル・サプライチェーンに従事する何百万人もの下請け労働者に対する多国籍企業の責任を追及する必要がある。下請けへの依存度が高まったことで、かつてないレベルの労働者搾取、時に奴隷レベルともいえる搾取が起きている。多国籍企業が労働組合や社会的パートナーと協力し、当該サプライチェーンのあらゆるレベルを通じて、 労働者が尊重され、尊厳をもてる公正な労働条件を確実に提供するために、我々が一丸となって最低基準を設置することが重要だ。  我々はともに測定可能かつ見直し可能で各国や世界の環境の中で適切に規制 できる環境・社会・企業統治(ESG)基準を設置することを通じ、説明責任を構築しなくてはならない。

 近代の奴隷制をなくすことと、職場における暴力をなくすことは密接に関連している。女性は男性に比べ、職場における暴力の影響を不均衡に大きく受けている。我々はジェンダーに基づく暴力は蔓延しており、体系的にアプローチする必要があることを認識している。だからこそ、力を合わせて暴力やハラスメントに関する国際労働機関(ILO)の条約が、20196月のILO総会の第2回目の(最終)交渉で検討される際に、これが確実に承認されるようにしなくてはならない。この条約を採択することにより、ジェンダーに基づく暴力を防止し、対応するための指針と法的基準ができる。

 21世紀のこの豊かな世界において、依然として人身売買が行われ、強制労働させられている人間が存在することは、決して許容できない忌まわしき事実である。労働組合と企業は市民社会と協力し、近代の奴隷制を防止し、職場から暴力を排除し、労働法の実施状況を確実に監督し、違反があれば、あらゆるレベルで違反者の責任を追求しなくてはならない。これらは持続可能な開発目標(SDGs)の目的であり、とりわけ、以下の目標8のターゲット7の目的である:「強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終結し、子供兵士の採用と利用を含む最悪の形態の児童労働を確実に禁止・撲滅し、2025年までにあらゆる形態の児童労働を根絶する」

結論

 第一回サミットの参加者全員が社会正義、労働組合権、ディーセントワークを近代交通産業および広く社会一般において促進するための共通項を見出すべく、対話を継続することを約束した。参加者は、フランシスコ教皇の2回目の回勅「ラウダート・シ」でも要請がなされた通り、17の持続可能な開発目標(SDGs)のために努力することを約束し、とりわけ、貧困とあらゆる形態の現代の奴隷制を撲滅し、人的要因による気候変動をなくすことを約束した。これらの目標を達成するためには、互いに協力し、お互いを信用し、尊重しなくてはならないことも認識している。そうすることは、サミットの中でその概要が示された、様々な新しい課題に協力して対応する際の基盤となるだろう。そうした新たな課題に対しても、我々は前向きに対応することができる。これは関係づくりの始まりであり、お互いに責任ある行動を取ることにより、次の次元へと進むことができるだろう。

 

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