Skip to main content

ダカールBRTシステムの成功に不可欠なインフォーマル労働者の参画

ニュース 09 Feb 2021

ダカール・シェイク・アンタ・ディオプ大学人文地理学研究所、パパ・サコー教授

 

昨年、コロナ禍で移動が制限された際、公共交通システムは一夜にしてほぼ停止状態に陥った。国際労働機関(ILO)によると、アフリカ全土でウイルスを封じ込めるためにロックダウンが実施され、ソーシャルディスタンスを保つ措置が導入されたことにより、公共交通の収益は81%減少し、西アフリカだけでも約2,800万人のフルタイムの雇用が失われた。

ダカール市当局はフォーマル(正規の)交通運輸部門に対して財政支援を提供した。セネガル政府はインフォーマル労働者が国家経済にとってどれほど重要であるかを認識しており、最近、インフォーマル労働を管轄する新たな大臣を任命した。しかし、この大臣の役割も、都市部のインフォーマル経済を監督するに留まっている。そのため、政府は生計を顧客に大きく依存しているインフォーマル労働者にとって意味のある支援ができずにいる。インフォーマル労働者の実態は公式な統計では容易に浮き彫りにならない。インフォーマル労働者への支援が適切に行われないことで、何千世帯もの家族が貧困に追い込まれ、貧困撲滅、ジェンダーその他の不平等の削減、回復力ある経済や都市の構築など、複数の持続可能な開発目標の面でセネガルの進捗を遅らせる可能性がある。

シェイク・アンタ・ディオプ大学とグローバル労働研究所が発表した新たな報告書が指摘するように、ダカールのインフォーマル交通運輸労働者の状況は、コロナ禍前から既に脆弱だった。国際運輸労連(ITF)から依頼を受けて作成したこの報告書では、ダカールのインフォーマル交通運輸労働者の懸念や実体験に焦点をあてている。コロナ前に収集されたデータを見ても、雇用主と雇用契約を結んでいると答えたのはわずか6パーセントなど、ダカールのインフォーマル交通運輸労働者の状況は極度に不安定だった。

調査対象となった全労働者の3分の2(68.7%)は正規の仕事に就いていなかった一方、57%が乗客が支払う運賃から直接収入を得ていると報告した。ダカール市が計画している高速バスシステム(BRT)プロジェクトにより、インフォーマルセクターで働く5,000〜10,000人の雇用がリスクに晒されていると同報告書が指摘していることは極めて重要だ。

このような大規模な失業は必ず起きなければならないわけではない。ダカールのインフォーマル交通運輸経済をフォーマル(公式)化し、社会的不平等を低減させることは、より強力な未来の交通運輸システムと、より繁栄した都市の両方を構築する上で貢献できる可能性がある。インフォーマル交通経済からフォーマル交通経済へ公正な移行を図るためには、ダカールのインフォーマル労働者の性質に深く配慮するとともに、BRT建設がインフォーマル労働者の生活と労働条件にどのような潜在的影響力を持ち得るのかを評価する必要がある。しかし、報告書が指摘しているように、BRTプロジェクトの初期の計画段階で相談を受けたインフォーマル労働者はほとんどいないようだ。これは、アフリカの多くのBRTプロジェクトに散見される欠点と言える。

真に社会を変えるBRTや公共交通システムを実現するため、セネガル政府や世界銀行などの主要資金提供機関ができることはいくつかある。まず、産業のフォーマル化のために労働者自身が行ってきた提案に耳を傾けるべきだ。提案には、労使による雇用契約の締結や労働時間の短縮を担保できるよう、社会的保護や規則を強化することも含まれている。特に女性を対象とした職業訓練の機会を増やすべきであり、現在、インフォーマル交通運輸部門で働く労働者をBRTで優先的に採用するべきだ。バス停にトイレ、シェルター、飲料水などの設備を設けるなど、職場も改善すべきだ。

第二に、政府はBRT建設で職を失う労働者を支援し、収入の喪失を補償し、労働者を新しい職域へと配置転換する必要がある。また、 BRTの影響をジェンダー面から分析することも必要だ。ダカールのインフォーマル交通運輸で働く不安定雇用の労働者は男性より女性の方が多い。つまり、女性労働者の方が自動化やBRT導入の影響を受けやすいことを意味している。

また、インフォーマル交通運輸産業のミクロ経済、フィーダー輸送サービスや労働者の収入に関する分析をもっと行う必要がある。他の研究が示しているように、アフリカでBRTが成功したのか、あるいは失敗したのかについての分析や、BRTが及ぼした全体的な影響に関する独立した分析はほとんど存在せず、BRTが他のインフォーマル交通運輸機関とどのように相互作用しているかは無視される傾向にある。したがって、この側面からより多くの研究を行うことが重要だ。

究極的には、BRTの成功は、健全な設計や建設作業グだけでなく、インフォーマル交通運輸産業の根本的な政治と経済の問題に対応できる長期的かつ全参加型のビジネスモデルを形成できるかにかかっている。私たちは今、ダカールの全ての公共交通機関に統合され、乗客や雇用の正規、非正規を問わず労働者などの人間を開発の中心に据えたBRTシステムを構築する機会に恵まれている。コロナ前と同じ過ちを再び公共交通機関で繰り返す余裕はもはやない。

現場の声

ニュース 26 Apr 2024

全インド鉄道員連盟100年の歩み

2024年4月24日配信 国際運輸労連( ITF )は、今日( 2024 年 4 月 24 日)、創設 100 周年大会を開催する全インド鉄道員連盟( AIRF )に祝辞を述べる。 AIRF の 100 年にわたる歩みは、 1974 年に 170 万人の鉄道員が 20 日間にわたるストライキを実施するなど、苦闘の末に勝ち取った成果に満ち ている。 このストライキは政治問題へと発展し
ニュース 記者発表資料 15 Feb 2024

ILAの職域闘争勝利を祝う

 北米東岸港湾の労働組合である国際港湾労働者協会( ILA )が、ニューロンドン(米コネティカット州)のオーステッド社洋上風力発電事業をめぐる職域闘争で勝利したことを歓迎する。  ITF のパディ・クラムリン会長は次のように語った。 「これは ILA 、 ILA 第 1411 支部、そして ILA 組合員全員にとっての記念すべき勝利だ」「揺るぎない連帯と戦略的行動に支えられた 8 カ月間の闘争は
ニュース 14 Feb 2024

インドネシアで違法解雇された空港労働者が勝利

Gebuk 労組は、航空ケータリング会社アエロフード・ケータリング・サービス・インドネシアにコロナ禍で違法解雇された労働者に補償金を支払うことを約束させ、組合員のために大きな勝利を確保した。 ITF 加盟のインドネシア空港労連( FSPBI )に加盟 する Gebuk 労組は、ジャカルタ空港で働く航空ケータリング業務委託企業の労働者組合だ。 同労組は 2 月 6 日に大規模デモを行ない