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スビッツァーの協約解約申請はオーストラリアのサプライチェーンをリスクに晒し、マースクの評判を貶める

ニュース 記者発表資料 02 Feb 2022

 APモラーマースク傘下の曳船事業会社であるスビッツァーがオーストラリアの全労働者との団体協約の解約を申請したことは、サプライチェーンの混乱を一層深める可能性がある。マースクは運輸労働者の権利に対して概ね建設的な姿勢を見せてきたが、残念ながらここ数年、大きな方針転換を見せていると組合側は主張する。

 ITFのスティーブン・コットン書記長は次のように述べた。「コロナ禍が始まって以来、組合は政府や運輸機関と協力しながら、サプライチェーンを維持するために様々な対策を講じてきた」

 「ここ2年間、運輸産業のあらゆる部門の労使は協力しながらコロナ禍のさまざまな局面を乗り越えてきた。マースクを含む多くの企業がITFITF加盟組合と共に船員交代問題の解決に積極的に取り組んできた」

 「我々が伝えたいのは、成熟した、相互に尊重できる労使関係は可能だということだ。サプライチェーンの維持にしても、持続可能な海運への移行にしても、海運業界が直面する課題に対応する唯一の方法は、関係する全ての人と建設的な対話を行うことだ」

 コットン書記長は、マースクグループの全ての企業がILO87号条約および98号条約に明記されている結社の自由と団体交渉権を支持することが重要だと指摘し、次のように続けた。

 「自ら望めば、自由に団結し、独立的な労働組合を結成、加入し、それらの組合を通じて使用者と団体交渉を行うことは全ての労働者の権利だ。タグボートの労働者の結社の自由と団体交渉権を認めるスビッツァーは、問題解決のための建設的対話の基盤となるべきだ」

 「スビッツァーがタグボート労働者を困窮させ、サプライチェーンを不安定にする近視眼的なコスト切り下げ競争に関与する必要はない。スビッツァーがオーストラリアの方針を転換し、マースクが持つ価値観の最善の部分を反映させることができることを我々は知っている。コロナ禍で我々はそれを見てきた」

 「オーストラリアの家庭や企業に食料、燃料、医薬品、消費財を届ける、信頼できる海運サプライチェーンの維持に労使が再び注力できるよう、スビッツァーはITF加盟組合と協議を行い、共に問題を解決すべきだ。

 タグボート部門は我々のサプライチェーンの安定化に不可欠だ。タグボート労働者は海運の航空管制官のような存在だ。彼らがいなければ、何も動かない。彼らの技術がなければ、コンテナは山積みのまま、船舶は滞留し、衝突事故が起これば最悪の事態が発生する」

マースクグループは、タグボート部門を近視眼的な「底辺への競争」から救い出すべきだ

 ITF内陸水運部会のユリ・スホルコフ議長は、APモラー・マースクは、事業を展開する全ての部門の賃金・労働条件や安全衛生の基準設定について倫理的な責任を有すると主張する。

 スビッツァーが協約解約に成功すれば、オーストラリアの何百人ものタグボート労働者の賃金・労働条件は法律で定められた最低限度まで引き下げられるだろう。その結果、組合が勝ち取った、疲労防止に不可欠な時間外労働の制限も廃止されるだろう。

 「このような行為は、いかなる使用者においても、受け入れることはできない。特にマースクとその子会社とは、相互に信頼できる強固な労使関係の構築に向けて努力してきただけに、残念でならない。マースクグループはコロナ禍においても巨額の利益を上げ、ITFとの建設的な関係の恩恵を得ている。しかし今、重要だが過小評価されがちなタグボート部門の労働者に敵意を顕わにしたスビッツァーの恥ずべき行為を承認することで、方針転換を選択した」スホルコフ議長は続けた。

APモラー・マースクはコロナ禍において労働者や組合と協力することで恩恵を得てきたと述べるITF内陸水運部会のユリ・スホルコフ議長 (Credit: SUR)

 また、ITFのリサーチャーがグローバルサプライチェーンにとってリスクが高い分野を分析したところ、港湾の曳船サービスが挙げられたことを指摘し、次のように語った。

 「タグボート市場で頻繁に見られる“底辺への競争”は、必然的に労働基準や安全基準の切り下げを招く」

 「タグボート乗組員の賃金カットや危険なまでの人員削減で、ミスが多発する事例をいろいろな所で見てきた。船社との契約を勝ち取るために、可能な限りのコスト削減が追及されている。船社や港湾事業者はこの重要な部門にこれほど大きなリスクを負わせることは賢明ではない。事故、負傷者の発生、サプライチェーンの停滞が容易に予測できる」

 「コロナ禍とサプライチェーンの逼迫という、この困難な状況においては、労働者の公正な処遇や保護のために、労使が協力して取り組むべきだ。スビッツァーのように敵対的な行動で不必要な紛争を生み出すのではなく、労使共通の道のりを見つける手法の方がはるかに望ましい」

 スホルコフ議長は、スビッツァーが公正な賃金や船内の安全性確保が収益性の高いタグボート運営と両立しないと本気で考えているならば、親会社のマースクラインに影響力を行使してもらい、スビッツァー等のタグボート事業者への下方圧力を阻止することを強く提唱すると主張する。

 「安全なタグボート部門は、マースクにとって、長期的な利益となる。マースクグループは一度立ち止まって、全体を俯瞰して見るべきだ。誰もが安全、安心、安定したタグボート部門の恩恵を受けていることが分かるはずだ。我々の仲間のオーストラリアの組合が新協約の一環として、タグボート労働者の公正な賃金、安定した雇用、安全が確保される労働時間と休息のために団体交渉を行う権利を支持することを期待する」

 現行の協約の締結組合は、ITFに加盟するオーストラリア海事組合(MUA)、オーストラリア海事電力技師組合(AIMPE)、オーストラリア商船職員組合(AMOU)である。

 

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