世界52カ国の100を超える交通運輸労組が英国のグラント・シャップス運輸大臣に書簡を送り、スト中の組合と協議するよう促した。
世界の交通運輸労働者2千万人を組織する国際運輸労連(ITF)が取りまとめたこの書簡は、「英国政府が鉄道サービスやインフラ事業の削減を強要しようとしている」ことにショックを表明するとともに、労使問題に関する英国の信頼が損なわれる可能性があると警告している。
全英鉄道海事交運労組(RMT)、ユナイト、機関士火夫組合(ASLEF)などの労働組合が英国の鉄道やロンドン地下鉄で実施しているストは世界の注目を集めている。他の交通運輸部門や他国の組合も賃金・労働条件に対する同様の懸念からストの準備を進めている。23日、ロンドンのヒースロー空港の労働者は夏期休暇の時期にストを行うことを発表した。
ITFのスティーブン・コットン書記長は25日にも計画されているRMTのストを前に次のように語った。
「英国政府がCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で労働組合との対話を支持することを表明してから1年も経っていない。公共交通を拡充すべき時に、鉄道サービスの削減やインフラ事業の廃止を強要しようとしていることに世界の労働組合はショックを受けている」
「政府は民間事業者を存続させるために何百万ポンドもの資金を投入し、労働者は鉄道を動かし続けた。コロナ禍の最中、運輸大臣は鉄道労働者を「真のヒーロー」と称えた。しかし、コロナ禍から脱し、(生活費危機が深刻化し、英国のインフレ率が40年ぶりの高水準になる中で、)我々が目にした大臣の最初の対応は、同じ労働者に打撃を与えることだった」
「グラント・シャップスは労使問題に関する英国の評判が損なわれ可能性があることに気付くべきだ。大臣が国内の組合との対話にすら消極的であるならば、“グローバル・ブリテン”政策の一環としての世界の組合との関与に何の期待がもてるだろうか?」
「世界的には、鉄道であれ、航空であれ、海運であれ、労働組合が業界、使用者、政府と膝を交えて話し合っているところは、コロナ禍からの移行がよりスムーズだ。英国政府はコロナ禍からの持続可能な経済回復を主導する機会を手にしている。その政策の中には、「ナショナルレール」とロンドン交通局(TfL)に対する持続可能な長期の資金調達が含まれなければならない。協議のテーブルにつくことを拒否すれば、政治のためにこの機会を逸することになる」
ITFのパディ・クラムリン会長はシドニー(オーストラリア)から次のようにコメントした。
「この争議の行方を世界が注視している。グラント・シャップスは決断しなければならない。協議のテーブルにつき、自分自身で宣言したように、当然の敬意と尊厳をもって交通運輸労働者を処遇すべきだ」
「それとも、自身や政府に対する矛盾を続け、数カ月前に賞賛した労働者を裏切り、大金持ちの鉄道会社役員たちの私腹を肥やすつもりか」
「RMTは交渉による解決が実現するまでストを続けると宣言している。今日、世界の交通運輸労組は英国全土でピケを張っている勇敢な鉄道労働者への連帯を表明し、交渉による解決が実現するまでRMTを支援し続けることを約束した」
欧州運輸労連(ETF)のフランク・モリール会長も運輸大臣に対応の強化を要請した。
「今週、英国全土で5万人の鉄道労働者がストに参加した。1989年以来、最大規模の鉄道争議だ。今週のストに続くストがエスカレートした場合、欧州および世界の交通運輸労組は英国の鉄道労組を支援する用意ができていることを明確にしておく。政府が介入し、深刻化する生活費危機に見合った雇用保障と賃上げを実現する解決策を見出すために仲裁すべきだ」