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新型コロナウィルスの世界的流行(パンデミック): 旅客輸送サービスは不可欠

ニュース 09 Apr 2020

新型コロナウィルスの危機が続く中、国や地域の公共交通の継続性を確保することは、社会と経済に不可欠です。とりわけ、効果的に機能する公共交通システムに依存してきた多くの市民や、今現在も毎日仕事に行く必要のある必須サービスの提供労働者にとっては不可欠です。

旅客輸送サービスを維持すれば、新型コロナ危機が社会の危機に発展することを阻止できる

公共交通部門は強い地域社会を支えることができるのが特徴です。したがって、このような危機の時期には、持続可能な都市交通を支援するため、市民が力を合わせるべきです。全市民が協力する際に、その準備の初期段階から労働組合と対話をもち、意思決定にも組合を参加させることができれば、労働者の理解も深まり、協力も得られるでしょう。

労働組合は知恵と情報の重要な宝庫

同様に、公共サービスを確実に機能させるために、現場でたゆみなく働く地方政府関係者もまた、重要な役割を果たします。

キーワーカー(緊急時に不可欠なサービスを提供する労働者)の移動を継続的に可能にしている国と地域の交通サービスは不可欠なものであり、そこで働く労働者と乗客が安全に移動できるよう保障されるべきです。また、駅構内での都市間交通への接続が維持されることも同様に重要です。

サービスの継続を確保するため、管轄当局が国や地方の交通運輸で働く人々に適切な防護具の提供を保障することも極めて重要です。また、会社が従業員や乗客の安全衛生を保護するための方策を確保することも重要です。

前代未聞の危機に直面している今、公共交通の当局と国や地域の運行業者は、ソーシャル・ディスタンシング(感染拡大を防止するために他者と物理的な距離を保つこと)を含め、各国の当局や国際保健機関(WHO)が出している安全衛生に関する勧告や要件に適合した対策を取る覚悟でいます。さらに、こうした安全衛生対策は、労働者の雇用契約の形態や性別、移民かどうかといったこととは無関係に適用されるべきです。

国や地方の交通運輸のステークホルダーの多くが、一部には労働組合と交渉を実施するなどして、既に一連の包括的な感染拡大防止策を導入し、交通運輸を動かし続けるために継続的に情報を共有しています。

我々は良好な実例に関する情報交換を最大限に行い、交通運輸の提供者の間で、また、労働組合とも社会的な対話を実施しながら、一丸となり専門性を高めていく覚悟でおります。

新型コロナウィルスが都市交通や首都圏交通産業にどのような社会的、経済的、財政的影響を及ぼしたかを判断するために、今後どのような手段を取ることになるかはまだ誰も決められる状況にありません。しかし、公共交通に従事する労働者は交通運輸を守る存在であり、彼らを守る必要があります。

例えば、中国、イタリア、スペイン、フランス、米国などからまず得られたデータによれば、旅客輸送産業のエコシステムが甚大な多面的影響を受けることになろうことは確実です。旅客輸送産業のエコシステムには、地域の公共交通局、運行業者とその下請け業者、新興の交通運輸サービス提供者、関連サプライチェーン産業などが含まれます。

その影響は、単に運賃収入が減ったり(乗客数が9割以上減少した都市もあります)、公共交通の車両やインフラの除菌作業やソーシャル・ディスタンシング対策の実施に追加費用がかかったりしただけでなく、財やサービスの生産が減少し、補助産業の売り上げが減少したことなどもあり、都市において最大とは言わないまでも、主要な雇用主である公共交通の職場で雇用を維持できなくなる可能性も出てきます。

そのような社会的、経済的、財政的な影響を限定的なものにするためには、各国の政府が特別な方策を講じる必要が出てくるでしょう。例えば、危機の続く中でも交通サービスの維持を確保し、この危機が終息した際には速やかに通常運行に戻れるようにするため、公共交通ネットワーク維持のための財政的支援などの支援策は速やかに提供される必要があります。

公共交通の運営が乗客からの運賃収入によってのみ賄われている国では、公共交通は今を生き残れるかどうかの瀬戸際にあります。したがって、財政支援策は労働者の雇用と労働条件の維持をも目指すものでなくてはなりません。公共交通の支援産業がこの危機を乗り越え、生産を回復し、市民が引き続き移動に公共交通を使うよう担保するために、公共交通の支援産業に対しても同様の支援策が必要です。

旅客輸送システムとそこで働く労働者が乗客の移動を継続的に可能にしているのであり、経済が正常に機能するためには、彼らこそ不可欠な存在であるため、支援策は単に公共交通産業を支援するだけでなく、社会全体の支援にもつながるということを忘れてはなりません。

このような未曽有の危機の時代に、各国の管轄当局の支援を受けながら、公共交通サービスの継続性を確保し、旅客輸送に関わる様々なステークホルダーへの社会的、経済的、財政的影響を抑えようと、私たち組織の構成員は決意しています。

例えば、良好な支援策の例として以下が挙げられます:

  • 全ての労働者が感染防止対策などの新型コロナウィルスに関する最新かつ最も正確な情報を得られるよう担保する。
  • 全ての職種の労働者に手袋、マスク、手指の殺菌製品などの適切な個人用防護具(PPE)を提供し、当該地域の設備の利用可能状況などに照らしながら、ウィルスの感染拡大防止に役立つ適切なその他の手段を講じる。
  • 公共交通の車両、職場、利用者が接触する資産(発券機や手すり、座席など)を徹底的に清潔にし、殺菌する。また、乗客用に手指の消毒液を用意する。
  • ソーシャル・ディスタンシング基準に従い、運転手や他の従業員と乗客の接触を制限する(例えば、車内の切符販売の中止、乗降を後方ドアだけに制限するなど)。
  • サービスの継続性を確保し、公共交通局の決定を遵守するため、輸送需要の低下に基づき、サービス提供のレベルを変化させる(例えば、夜間サービスやスクールバスが停止された都市もある。また、労働組合との合意のもと、休暇や学校の休みに合わせてサービスを提供している都市もある)。
  • 医療従事者やその他の必須サービス提供労働者を対象とした専用輸送サービスを提供する。

旅客輸送は経済が正常に機能するために不可欠であることを念頭に置き、これらの支援策は当該の輸送産業を対象とするだけではなく、社会全体を支援の対象とするべきです。また、気候変動問題への対策を維持し続けるためにも、公共交通は肝要なのです。

プロ意識をもって業務を遂行し、公共交通サービスを提供することで、市民の移動を可能にし続けてくれている全ての公共交通労働者に感謝します。公共交通労働者は、自らや乗客の感染リスクを最小限に抑えながら、安全に業務を遂行できてしかるべきなのです。

未曽有の危機の時期に、我々が今後も公共交通を不可欠な公共サービスとして促進し続ける決意を持つことが極めて重要です。

 

国際公共交通連合(UITP)事務総長 モハメド・メジャニ

都市自治体連合(UCLG)事務総長 エミリア・サイーズ

国際運輸労連(ITF)書記長 スティーブ・コットン

国際鉄道連合(UIC )事務局長 フランソワ・ダビーン
 

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